男はつらいよ 熊野編 後姿の寅次郎 熊野夢日記 冒頭シーン

冒頭<夢のシーン>
 新宮市神倉神社 お燈祭り 時代は江戸末期 白装束の旅の僧一茶(渥美清)階段を駆け下りる。翌朝 神倉さんが見える山の一軒家(広津野付近)

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 女ぼたん(太地喜和子)「私たち、まるで織姫と彦星みたいね。こうして年に一度くらいしか会えない。」

 一茶「だからよ、龍野(第17作 寅次郎夕焼け小焼け 昭和51年7月封切りのロケ地)にいると思って訪ねたら、熊野にいるっていうことで、こうして熊野まで逢いに来たんじゃないか」

 女「そうよ、私ね、この近くの太地ってところでうまれたの。事情があって、実の父母を知らないけどね。」
一茶「そうかい、お互い風来坊だな、またどこかで会おうや。達者でな。」
一茶俳句をしたためて女に渡す <きぬぎぬや かすむまで見る 妹の家> 

   

 峠付近の草むらで何かがさごそ動いている。熊がでてくる。 驚く一茶。
 一茶「ここは熊野。やっぱり熊が出るんだ。」逃げる一茶。谷に落ちて気を失う。

顔に水がぽたぽた落ちてくる。
 寅さん「ひえ、つめてえ。」 (紀伊勝浦行特急南紀の中。熊野市付近。寅さんは眠っていた。)若い女たち「あらごめんなさい。しっかりふたを閉めたつもりだったのに。ペットボトルから水がこぼれてるわ。
 網棚に置いた女たちの荷物から水が滴っている。


寅さん「いいってことよ、水も滴るいい男ってね。お姉ちゃんたち、観光旅行かい?」
女たち「私たち、大学生。ゼミの研究旅行なの。あちらに座っているのが、先生。熊野文学の旅というテーマで、熊野のあちこちを歩くの。おじさんは?」
寅さん「俺かい、俺は訳ありの旅さ。知り合いから頼まれごとをされてね。まあ、元々風来坊だから、風の吹くまま気の向くままの旅さ。」

 カメラは、特急の窓の外へ。七里美浜。太平洋。 タイトル「男はつらいよ」後姿の寅次郎・熊野ゆめ日記

 
シーン① 那智勝浦町ゆかし潟周辺 ゆかし潟祭りがおこなわれている。ステージでは、わがらーずが「思い起こせば恥ずかしきことの数々」を歌っている。その周りには、地元産品を売る市がたち、潟の周りは、ウォークをする人々俳句の吟行をするグループ ジオガイドとともに歩く人々

     清乃22歳 ジオガイドをして参加者に説明している。

 

清乃「ここは、ゆかし潟といいます。関西では珍しい汽水湖です。紀伊半島ができたといわれる1200万年前頃に、この汽水湖もできたといわれています。空から見ると、ハート形をしています。」

     グループが移動しようとしたら、道の真ん中で、バックパックを背負いギターケースを持って安朗が、清乃を見つめ続けている。
     
     清乃、安朗に話しかける、
清乃「あのう,その荷物おろして、一緒に参加しませんか? ほら、そこのテントで預かりますよ。」
      安朗、清乃の笑顔に魅かれて、ウォークに参加する。
ステージでは、「しんぐうことばあそびうた」がはじまる 安朗、清乃に話しかける。

 

安朗「今日は、色川からも農産品を出店していると聞いたんですが?」
清乃「それならステージの横よ。ちょうどわたしそこへいくところ」
そこに、声がかかる
夕子「やっちゃんじゃないの? え、どうして?」
清乃「夕子さん知り合い?」
夕子「ええ、親類の安朗君。安朗君、今の時期なら研修中でしょう?」
安朗「このまま、官庁に勤め、それから親の事業を継ぐ人生でいいのかな? と思ってさ。将来会社を継ぐんだったら、弟の方がふさわしいだろうし、 
   それともう一つ、ここ熊野で、確かめたいことがあって…」

 

シーン新宮駅 特急南紀から降りてくる寅さん D51工房に電話をかける。
豊村啓二「え、東京からわざわざ。それはどうもすいません。叔父から聞いています。今から迎えに行きます。」
豊村、仕事の手が離せないので従業員の松原に頼む。

 

シーン色川 安朗は、夕子が入植している色川へ行くことにする。安朗と夕子の会話。

安朗「このままの人生でいいのかな、自分のやりたいことをやるべきなんじゃないかな?と思ったとき、夕子さんのことを思ってね。夕子さん、京大の大学院生の時、研究で色川を訪れ、そのままここに入植して、農業しているでしょ?
 僕も農林水産省に入り、農村振興部に配属され、研修で海外の色んな地域にも出かけたんだよ。世界の色んな地域、農業や環境の現状や歴史を見ていて、僕の生き方はこれでいいのかな、と思ってね。そこで、夕子さんを思い出したわけ。
 それともう一つ、ここへ来た理由は、僕の実のお母さんに逢いたくて。お父さんと結婚したころの写真でしか知らないけど、藤井の家を出た後、熊野に帰ったということは聞いていたんだ。どうして、家を出ることになったのか、誰も教えてくれなかったし。
 ゆかし潟祭りの時、お母さんの写真そっくりな人がいてね。清乃さんって言ったよね、ジオガイドしていた人。」

 

シーンD51工房 ミュージックカフェ フォークス
寅次郎「で、どうして奥さん実家に帰ってしまったの?」
豊村啓二「最近、話がかみ合わなくて。どう表現しようかな。 例えば、僕は、立体の話をしたいんです。でも彼女の口から出てくるのは平面の話なんです。 結婚した当初は、ふたりとも、目標を定めてそこに向かって努力するという直線的、平面的な世界観でした。でも、人生を重ねるうちに僕は、過程で、未熟であっても、今ここに、永遠があると思うようになったんです。例えば、長男のことでも意見が対立しましてね。長男には特殊な感性があると僕は思います。いわゆる発達障害なのですが、彼女は、幼いころも、今も、長男の努力が足りないだけだと、叱咤激励するんです。」


 啓二は、地元で発達障碍児の会の会長をしている心療内科医の前田医師とは同級生。前田医院の看護士、前島誠子と最近会って話す機会が多い。誠子は、クリスチャン。同じくクリスチャンである前田医師を通して、啓二は旧約聖書に興味を持つようになり、誠子とも話し合うことが増えた。前島誠子は、シングルマザー。子ども(未知)は、アスペルガーの診断を受けている。