ひとりひとりちがう認知特性

 今読んでいる「認知心理学」のテキストには、<記憶の過程は、符号化、貯蔵、検索の3段階に分けることができる。>とさらりと書いています。
 
 <符号化とは、入力された感覚刺激を「意味」に変換する過程を示している。>
 <符号化とは、もともとは情報工学の用語であり、入力情報を情報処理システムにおいて処理可能な形式の信号に変換する過程を指す。>ともあります。
 
 これを実際の生活に当てはめるとどういうことになるでしょうか。
 
特別支援教育指導資料第22集−?」には、

 < 人は、ある事物や事象をとらえる場合に、得た情報を簡略化して記憶します。これを符号化といいますが、何を符号化してるかは人それぞれで、児童生徒の中には、友達の表情と感情、自分の取るべき行動等を符号化することが苦手な子どもがいます。>
 
 <、知覚や認知は、人によって違うことが分かっています。同じものを見ても、理解した内容や反応が違います。また、個人内でも次のように、視覚、聴覚、触覚等の五感に違いがあることが分かってきています。具体的には、聴覚的な処理が苦手であるために、聞いただけでは意味が分からないけれど、視覚的な処理が得意で、図や絵をみれば課題が解決できる人もいます。このように、一人一人にある独特の認知を「認知の特性」と呼んでいます。気がかりな姿のある児童生徒一人一人の認知の特性をとらえ、支援の方法を考えていくことが大切です。認知の特性を知る一つの方法として、DN-CAS、WISC-?、K-ABC 等の心理検査がありま
す。>
 
 また、「Magic of NLP」には
 
 < 私たちが実際に知覚するものは、じつのところ、わたしたちの感覚器官がわたしたちに伝達するものの表出、つまりモデルなのです。これら同化された個人のモデルは表出体系と呼ばれます。>

 < ある個人が他よりもっと頻繁にしようするひとつの体系は、その人の優先表出体系と呼ばれます。>
 
 NLPでは、相手の優先表出体系を見極め、そこに合わせた働きかけをすることによってラポールを形成するようですが、ラポールの形成のみならず、学校や家庭での教育・共育過程において、相手の「認知特性」を見極めることは大切だと思います。

またウィキペディアには、

< 人間の聴覚特性には周波数特性のほか、心理音響モデルによれば、ある周波数の音が響いている時には近い周波数の音は聞こえにくくなる。これをマスキング効果という。>

< 人間の視覚の性質上、明るさの変化に対し色彩の変化のほうが感知しにくい。言いかえれば輝度の解像度は色彩の解像度よりも高い。また、ゆるやかな明るさや色の変化の途中に不連続的な変化があると知覚しやすい反面、複雑な変化をする部分は細かく見分けにくく、多少の違いを感知することは難しい。>

とあります。

 私たちが概念を形成したり、認知したりする過程では、一般化や削除や歪曲ということは避けがたく、また一人一人の、「認知特性」は違うのだということを自覚していることが大切であると思います。
 
 我が身と我が身の子育てを振り返って、我が子の個性を見極め、それに応じた働きかけをできなかったなあと、子どもが成人を過ぎた今思います。
 
 「人間はそれぞれ個性的な存在だ。個性を大切にしよう」という表明は、とても大雑把な表現だと今は思います。
具体的に、どこがどのように違うのか、どのようにしてその違いを見出せるのか、その違いに応じてどう働きかけたらいいのか、そういった智慧が必要だと思うのです。
 
 また認知特性は、固定的なものではなく、働きかけ方によって、変化すると思います。
 
 色んな働きかけがあるとは思いますが、「よく観て、差異を見出してスケッチする」という方法を一つのモデルにして、今は取り組んでいます。