ウクレレをブルースで弾けるようになりたくて、その演奏法を学ぶだけでなく、ブルースやアメリカ黒人音楽の歴史をたどっています。その中で、黒人奴隷をめぐってリンカーンの事が気になり、歴史書を読みなおしました。
アメリカ合衆国 第16代大統領 リンカーン（1809〜1865）は、歴代大統領のなかで、日本の小学生にもよく知られている大統領だと思います。（カルビン・クーリッジ30代大統領の生涯を知っている人はどれくらいいるでしょう？）
図書館に行けば、子供向けの伝記が必ずおかれています。
学研が出版している学研まんが伝記シリーズ（日本PTA全国協議会推薦）には、表題として「どれい解放の父」とあります。
同書には
＜奴隷解放のために戦われた南北戦争＞
＜北部の州の人たちは、奴隷を使うことは、アメリカの自由と平等の精神に反するものだと、猛反対した。リンカーンもその一人だった。＞とあります。また＜我々は黒人奴隷の自由のために戦っている＞とリンカーンが言っている場面があります。
私のリンカーンについての認識は小学生並みで、「開拓者の子として生まれ、貧しい生活の中、独学で弁護士となり、大統領となった」「奴隷解放のために戦った」、「南北戦争は奴隷解放について、賛成反対に分かれて戦った」と言うぐらいの認識しかありませんでした。
改めて調べてみると、リンカーンが全面的に、即時に奴隷制を廃止しようとしたのではなかったということを知りました。
リンカーンの第一次大統領就任演説（1861.4．12）では、
「私は、合衆国に既に現存している奴隷制度を、直接的もしくは間接的に妨げるような意図・目的を何ら有しません。 私は、その様にする合法的な権利があるとは思いませんし、そうするつもりもないのです。」と宣べています。
リンカーンは、1860年に共和党の大統領候補に選ばれますが、その時の対立候補ウイリアム・スワードの方が、過激な解放論者と思われていました。（猿谷要著 アメリカ黒人解放史）
北部の人々が「奴隷制の廃止」を標榜するのは、「人道上」や建国の理念からではなく、「経済的な意図」もあったことでしょう。
経済的な意図や政治的な意図が複雑に絡んでいたようです。
南北戦争中のリンカーンは次のように述べています。
「わたしには２つの強大な敵がいる。前方の南軍と後方の金融組織である。後ろのほうが、手強い敵だ。」
そして、政府紙幣を合衆国の永続的な通貨発行システムとすると発表した1865年には暗殺されます。
「奴隷制の廃止」は、そのまま「奴隷が解放されること」は同じとは言えないでしょう。
それは、後の歴史を見れば明らかです。
リンカーン以後、政府紙幣を企てた大統領は暗殺されています。
ジュリアス・レスター著「奴隷とは」岩波新書1970の冒頭に
「どんなアメリカ黒人の祖先も、たどれば一枚の売札に行きつき、それ以上は遡れない」とあります。
奴隷船は、船倉に黒人を鎖でつないだままにし、排泄はそのまま垂れ流しだったので、臭いと傷みで数年の寿命しかなかったと言われます。
なぜ今私はブルースをやりたいと思うのでしょう。
それは、私は日本人でありながら、日本人の伝統的文化から遠く離れてしまっていると感じるからです。
ギターやウクレレは常に触れていますが、琵琶や三味線には触れたことがありません。
青年期の頃、食養を通して桜沢如一氏の著「無双原理 易」に出会ったときも、姿かたちは日本人であっても、その精神の中味は東洋の伝統文化を引き継いでいないとショックを受けました。
今また、受け継がれないまま多くの文化や自然環境が、次々と失われていっていると感じています。
ならばいっそのこと、音楽の原点に遡りたい。そう思いながらウクレレを弾いています。
ネアンデルタール人になったつもりで、声の響きを味わい、そして「あなた」と響きあいたいから、ルーツから遠く隔てられた人々の音楽、ブルースをやりたいのです。
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10月20日 日曜午後2時より NPO熊野みんなの家で
音楽と心理学と人類史を味わう ウクレレコンサートを開催します。
