山田洋次監督 たそがれ清兵衛 学問したら何の役に立つのだろう

藤沢周平原作、山田洋次監督の映画、「たそがれ清兵衛」(2002年)の中に次のようなシーンがあります。
 
頃は幕末、場所は庄内・海坂藩。
清兵衛は50石(実際は30石)どりの下級武士。
妻に先立たれ、認知症の母と、10歳と5歳の娘らと共に暮らしています。

ある夜、清兵衛は囲炉裏の傍で内職の竹細工・虫篭づくりをしております。
そのそばで、姉娘の萱野は、裁縫をしています。

針仕事をしながら、萱野は一か月前から習い始めた論語の一節を口にします。

清兵衛
「今詠んでいるのは論語ではねえか・・いつからそれを始めたよ。」
萱野
「先月の終わりから・・お師匠はんが、これからは、おなごも学問しねばだめだっておっしゃったの」
清兵衛
「それはええことだ。おれも子供の頃何度も何度も読んださけ、なつかしの。」
(間)

萱野
「お父はん・・針仕事習って上手になれば、いつかは着物や浴衣が縫えるようになるだろ・・・
Father…. If I learn to do needlework….someday I can make kimonos

だば、学問したら何の役にたつんだろう」
But what good will book learning ever do me?

清兵衛
「うーん、学問は、針仕事のようには役(には)たたねえかものう。
Well, it probably won’t ever be as useful as needlework.

(間をおいて)   
いいか、萱野、学問しれば、自分の頭でものを考えることができるようになる。
But you know….book learning gives you the power …..to think
考える力がつく。

この先世の中どう変わっても、考える力持ってれば、なんとかして生きて行くこともできる。
However the world might change if you have the power to think,
You’ll always survive somehow.

これは男もおなっこも同じことだ。
That’s true for boys and girls.

わかるか?
All right?

菅野
「はい
Yes
曽子曰く、吾日に三たび吾が身を省みる。人のために謀って而して忠ならざるか…」


先日の夜、仕事を終え、家に帰ろうとしていた時、町内の商店主さんから声を掛けられました。
「景気はどうですか?」

那智勝浦町内で接骨院を開設して、約20年になろうとしています。 年々景気は厳しくなっています。
2011年には、台風12号の被害で、観光客は激減し、さらに今年は、反日の流れで、中国からの観光客が途絶えました。
 
これからどうなっていくのか?
かつての高度成長期のような経済がやってくるとは思えません。
また、高度成長期は、自然破壊、公害の進んだ時期でもあります。
 
清兵衛の言葉が響きます。
「この先世の中どう変わっても、自分で考える力持ってれば、なんとかして生きて行くこともできる。」
 
「学問すれば、自分の頭で考える力がつく」
同時に、
自分の頭で考える力が身につくような学問でなければ、「学問」とは言えないのではなかろうか
 
そう思う。