勝たないけれど、負けない武道

太極拳は、他の武道と違って、自分が弱いと自覚することから始まる
スピードも力も弱い自分が、如何にして、自分より勝っている相手に負けないでいるか?
その工夫から生まれた武道が太極拳だ」
と教えられ、かつ伝えてきた。
そこで選ばれた選択が、接近戦。
相手のからだに密着してしまうこと。舎己従人。
釘を板に打ち付けるとき、ハンマーを一旦釘の頭から上に上げなければ釘は打ち決めない。
相手に密着することで、スピードや力の差を、発揮できなくすることができる。
次なる選択が、屈筋で加えられる力に対して、伸筋で対応するということ
その為に、屈筋側を脱力し、伸筋の力を発揮することを練習する
これは、吉丸慶雪氏をはじめ、多くの太極拳者が、理論として採用している
発勁の科学―続 合気・発勁の秘密を解く!
これには異論があって、脱力とは、伸筋も屈筋も同時に脱力するという理論もある
また、楊名時太極拳の、健康太極拳規範教程を読むと、関節の角度も重要なポイントとなってくる
健康太極拳規範教程―楊名時太極拳実技テキスト〈1〉 (楊名時太極拳実技テキスト 1)
理論はともかく、腕相撲のリング上で、弱者に左手の伸筋を使ってもらい、強者に普通どおり右手の屈筋を使って、腕相撲をしてもらった。
するとどうだろう、弱者はただ姿勢を保っているいるだけなのに、強者が力を込めても倒すことができなかった。
 ただこれは、だからやっぱり伸筋が屈筋を勝るのだ、とは単純にいえないように思った。
もっと全体的な文脈、場面状況が働いている。
腕相撲のリング上で、腕相撲のチャンピオンと気功家が、普通に腕相撲のルールで対決した場合、腕相撲のチャンピオンが勝ってしまうと思う。
全体的な状況を読むことが、一番大切なことだろう