めがねの王様

めがねの王様
 
ある朝のことです。
王様は、目を覚まして、びっくりしました。
世界全体が、赤みがかっているのです。
寝ていた布団も、部屋の壁も天井も、窓の外の庭、
遠くに見える山、空までもが赤みがかっています
 
火事かな、と一瞬思ったのですが、
熱くもないし、煙たくもありません
 
王様は、以前森の魔法使いから貰った魔法の絵の具を思い出しました
「好きな色に世界を塗ることができます」と魔法使いは言いました
 
そこで
絵の具箱を開いてみると
どの色も赤みがかっています
 
王様は
となりに寝ていた王妃を起こしました。
「どうしたことだろう、世界全体が赤みがかっているんだ」
王妃は応えました
 
「あなた、それはあなたが赤いめがねをかけているからよ
 めがねをはずして御覧なさい」
「赤くはなくなったけど、世界全体がぼやけてしまったよ」
 
二人は、めがね大臣を呼びました
王様は言いました
「透明のめがねはないのかね?」
めがね大臣は言いました
「王様、この国の人々は、誰もが色めがねをかけています
 一体、どのめがねが透明なのか、誰にもわかりません」
 
「じゃ、どうすればいいのかね?」王様は尋ねました
 
大臣は言いました
「とりあえずは、その場に応じて服を着替えるように
めがねを沢山持っておいて、その場に相応しいめがねをかけたらどうでしょう」