便所神 憲法を語る エコロジーを語る

みなさんこんにちは
<あなたはどなた>ですって?
私は便所神です。厠神
八百万の神と言いましてな、日本には800万の神が住んで居るそうな。
いやいや、住んで居ったんじゃ。
妖怪と同じでな、わしら住むところを人間に追われ、今では800万も住んでおらん。
<神は死んだ>という人間も居る。
 
その死んだはずの便所神がどうして、今頃のこのこ出てきたか?
神としての役目を果たす為じゃよ。
便所神はな、出産と子育ての神じゃ。
ちょっと人間に語ろうと思っての。
題して、「便所神、憲法を語る」あるいは「エコロジーを語る」じゃ。
時節におうとるじゃろ?
 
排泄や便所の話をするとな、スカトロジーだ、悪趣味だ、あるいは汚い話だといって、嫌な顔をする人がいる。
 
昔は、日本人そんなこと言わんかった。
少し薀蓄を語ろう。
花の岩や神社、って熊野市にあるだろう。
イザナミの神さまのお墓じゃ。カグツチを生んで、イザナミはみまかった、つまり死んだんじゃよ。
その時、大便からハニヤスビコ、ハニヤスビメの神が生まれ、小便からは水の神ミツハノメと穀物の神ワクムスヒが生まれたんじゃ。
ちゃあんと古事記に書いてある。
 
排泄の話は、汚い話ではない
バーチャルな時代といわれて久しいがね、排泄の時間というのは
人生のリアリティーと向き合う大事な時間じゃ
 
生きているということは、息をすることじゃろ
吸えば吐く、吐けば吸う、その繰り返しじゃ。
吸うてばっかりでは生きて行けん。からだ中二酸化炭素だらけになる。
じゃから、食うた以上、出すのが生きるということじゃ。
ま、一種の動的平衡系なんじゃな、人間や生物そして地球は。
難しい言葉じゃねえ。シットッタか?
 
今から、約350年前にな、デカルトという哲学者がな、人間は精神と肉体からできているといったんじゃ、元々ひとつのからだを精神と肉体とわけたように、汚いものと美しいものが別のものだとも分けた
その頃からだな、自然破壊に拍車がかかったのは。
そして、神や妖怪の住処を奪った。そうして、結局は人間自身の命をも危うくしている。
それで、わしが出てきたんじゃ。
 
これから語ろうとすることはな、憲法の条文を守ろうとする人にとっても、代えようとする人にとっても、心地よい話ではないだろうと思う。
聞きたくない話じゃ。
でも、全く別の次元から、憲法を語ろうと思うのじゃ
じゃが、私は、嫌われても語る。
忘れられん話になるじゃろ、なんせ毎日便所へ行かん人はないからのう。
わしを嫌っても、わしのことをおもいだすじゃろうね。
 
皆さん、お金の欲しくない人要らない人、手を挙げてください。
じゃ、石油の欲しくない人要らない人、手を上げてください。
一般の家庭じゃ、石油といっても使うのは、ま、車のガソリンとか石油ストーブの灯油ぐらいかな。
お金ほどは欲しくはないかの?
じつはな、もし、日本に石油が足らなくなったら、
欲しがるか我慢するかということを聞いているんじゃよ。
 
もう何十年前のことになるかの。
トイレットペーパーが足らなくなるといううわさが流れて、日本全国皆がトイレットペーパーを買いあさって買いだめしたり、業者が買い占めた時代があっての。
皆が使っているトイレットペーパー、あれは、言ってみれば森林と石油からできているんじゃ。
 
石油が足らなくなって、ペーパーがほんとに足らなくなったら、みんなどうするね。
 
それだけじゃない、バキュームカーで汲み取るにしても、水洗便所にしても、そこから先、私達の便がどうなるかしっとるかい。
 し尿処理施設というところへ行くんじゃよ。
 
し尿処理施設といってもな、家庭にある浄化槽とよく似てる、
嫌気性菌が住んで処理している槽と好気性菌が住んで処理している槽があっての、
ただ、好気性菌の住んでいる槽には、空気を送り続けるんじゃ。
その動力は、つまりは行き着くところ石油じゃ。
それだけでない、し尿処理施設では、水と固形物に分け、
水はそのまま流すが、固形物は焼却する。
つまり石油を使って、焼くのじゃよ。
決して、私達の便は、上手にリサイクルされていない
 
それに較べてどうじゃ、同じ日本の江戸時代。
皆が出した便はちゃんと回収されて、近郊農家の肥料となり
リサイクルされていたんじゃ。
 
で、最初の質問だが、
石油が足らなくなったら、紙はどうする?
し尿処理施設はどうする?
人間は人間同士争っているがな
同時に人間は、森に住む妖怪や神、未来の子どもたちとも戦争をしてきたのじゃ
侵略してきたのじゃ
今も、この侵略は続いておる
 
デカルトが精神と肉体にからだを分けたが、元々精神と肉体は分けられぬ
 しかしどうじゃ、
精神では、<石油がなくとも我慢します>、<憲法守ろう>とは言えるが
肉体は途端に、便の捨て場がなくて困るんじゃ
 
わしはな、憲法の条文を変えようとも、守ろうとも言っていない
ただ、別の次元から人間の暮らしを見つめて欲しかったんじゃよ
自分のなした行為、生活が他の命に、世界全体にどう関わっているか、
最後まで、ていねいに見つめて欲しかったんじゃ
人間を精神と肉体に分ける見方では、行き詰るということを言いたかったんじゃ
 
 こんなこというと嫌われるが、嫌われてもいい
 もう今日から、あなた方は、便所に行くたびに
妖怪や神々への侵略を思い出すからね
 
ま、嫌われたところで、退散退散。