学んでお徳な、記号論 入門

記号論?なんか難しそう。』 でも、私達の日常の悩みと深い関わりがあります。 

 地球の歴史46億年を、460mの道に例えると、1万年は1mmになります。(ところで、460mを、あなたは体感的にイメージできますか? 今いるところから、どの辺が460mでしょう。) その1万年前、1mm前に、人類は農耕を始め、以後文明を築いてきました。 文字ことばの使用は、数千年前からです。
 
 たった1mmの間に、人類が現在のような科学文明を築くことができたのは、「ことば<記号」のおかげでしょう。
 「ことば<記号」があって、私達は自分の気持ちや考え、様々な情報を、より細かく伝えることができます。
 人間以外の動物も、情報を伝えあうことができますが、人間の「ことば<記号」の情報量とは格段の差があります。
 また、音声のことばは、その場で消えますが、文字記号は、時間や空間を超えて伝わります。

 「ことば<記号」は、同時に、私達の悩み、苦しみと深く関わりがあります。 なぜなら、私達は、この「ことば<記号」を使って、考え、決断するからです。 「ことば<記号」は、便利な道具にちがいありませんが、同時に、私達の行動や考えを縛ります。 どんなに巧みで、詳細で、明解な「ことば<記号」であっても、それは現地ではなく地図だからです。

 外国語を学ぶと、「ことば<記号」が文化を生み出し、その文化が、行動や思考を制限することが見えてきます。

 また、ことばの使用が当たり前になるにつれ、ことばでは語りえない世界を見失っていくように思います。

 より充実した人生を送るには、「ことば<記号」についての学問(記号論)が、ひとの教養・智慧として必要と思います。
 しかし、私達の悩みの解決において、それらの教養・智慧が参照されることは少ないように思います。 記号論言語学を習うのはごく一部の学生のみです。 しかも、実用よりもアカデミックに。
 少ないと嘆いていても仕方ないので、不良成人学校の科目に「記号論」を取り上げることにしました。

 
〇宿題 あなたには、「姓名」があると思います。 妊娠が分かってから名前を付けられた人、出産後名前を付けられた人、色々あると思いますが、名前を付けられる以前、あなたは卵子精子や胎児あるいは新生児として存在していました。では、名前を付けられる以前のあなたは、一体「誰」だったのでしょう?

記号論を学ぶとき、外せないのが、ソシュールとC.Sパース(1839〜1914)です。パースの言葉を紹介します。「ありとあらゆる甘美な哲理の中でも、私という個人の存在は虚妄であるという教えほど高い香気を放っているものはない。」the most balsamic of all the sweet philosophy is the lesson that personal existence is an illusion and a practical joke. これは、仏教の「諸行無常諸法無我・縁起」の「解釈」ともいえます。「一切皆苦」は「一切は記号解釈である」とも。

あることばを使うとき、一般に約束(コードcode)されている意味とは違う意味で使うと、周りから訂正されます。 例えば、幼子がネコを指さして、「わんわん」といえば、周りの人は、あれは「にゃんにゃん」「ねこ」ですよ、と。詩人が、一般に約束されている意味とは違う意味でことばを使うと、さすが詩人だといわれたりします。 あなたは、詩人ですか?

「ことば<記号」は、暗闇を照らすスポットライトだと私は思います。光を当てないと、私達は、世界を見ることができません。しかし、見えないからといって、世界がない訳ではありません。見えてなくとも、「隠れたる世界」「不在の在」に包まれています。そこには、見るのではなく観ること(瞑想)と「信」が大切になってきます。「時間」も「46億年」「1万年」も「生死」も「地球は丸い」も記号であり、私達がそれぞれ「解釈」します。そして、「解釈」の仕方は、唯一ではないでしょう。

日時 2018年 5月26日 土曜日 午後1時半より
場所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町市野々 NPO熊野みんなの家
0735−30−4560