俳句・連句の勧め 俳句・連句で人生を充実させましょう

俳句・連句の勧め 俳句・連句で人生を充実させましょう

○ はじめに おもしろきこともなき世に(を)おもしろく -高杉晋作

この世に生まれてきた以上、だれしも充実した人生を歩みたいと思うのではないでしょうか?
 
しかし現実の人生は、生まれ育つ環境に左右されたり、思いもよらない出来事があったり、予定通りになるとは限りません。予定通りにならないと、大体はおもしろくないです。そこで、なんとか面白くしようと、自他に働きかけます。つまり、世「を」おもしろくしようとします。とはいえ、全てが自分が意図した通りになるとは限りません。自分自身のからだでありながら、からだすら思い通りにならなくて必ず老いていきます。そんな人生だからこそ、どのような人生を歩むにしても、どのような環境・世の中「に」いようと、今生きているその場で、創造と上達の工夫をし、その人生を詠うこと・味わうこと・おもしろく生きようとすることが、人生の充実につながると思います。
    
日本人の場合、人生の最期を、病院や老人ホームで過ごす人が増えています。あるいは、老後を独りで暮らす人が増えています。例え、老人ホームであれ、独り暮らしであれ、その生活の内容は、やはり創造と上達の工夫と、人生、生活、自然を詠うこと(味わう事・おもしろくしようとすること)で違ってくるでしょう。
       
歳時記一冊と、紙と鉛筆があれば、俳句はすぐに始めることが出来ます。ただ私は、趣味のひとつとしてお勧めしているのではありません。十七文字の言葉表現(創造と上達)を通して、自分をみつめ、自分を知り、自分を育て、関係を育て、人生と世界を育てるのだ、人生に対して色々な見方ができるようになるのだと心に決めることを勧めています。決意し、歩み始めると、あなたはその時一人の俳人・芸術家です。創造には、創意工夫と練磨が伴うことでしょう。でも、その練磨・修養こそが、人生の充実と他の人との共感の基盤になると思います。文芸の才能は、後からついてきます。
       
 宮沢賢治は農民芸術概論綱要で述べています。「求道すでに道である。」「いまやわれらは新たに正しき道を行き われらの美をば創らねばならぬ」「表現法のいかなる主張も個性の限り可能である」「世界に対する大なる希願をまづ起せ」「詩人は苦痛をも享楽する」「おお朋だちよ いっしょに正しい力を併せ われらのすべての田園とわれらのすべての生活を一つの巨きな第四次元の芸術に創りあげようでないか」
        
では、先ず歳時記を買うことと準備運動・止観瞑想から始めましょう。
      
人生の充実計画その1 先ずは、身の回りの日常を丁寧に観ましょう。 
      
青蛙ぱっちり金の瞼かな 川端茅舎
     
  青蛙(雨蛙)を知らない、見たことがないという人は殆どいないと思います。生垣の枝とか石垣の隙間などに、じっとしている姿を思いがけず見つけたりします。殆どの人が知っている青蛙、しかしその瞼が金粉を塗ったように縁取りされていることに気付いている人はどれくらいいるでしょう。
      
 「見る、知っている」ということと「観る・もう一度よく見、考えて対象との関係を捉えなおす」ということの違いを思い出させてくれる一句だと思っています。いつも見ている何気ない日常のあれこれが、丁寧に「観ること」によって、いつもと違った姿・関係を現します。

 止観瞑想の勧め
 俳句の詠い方の本はこれまで色々出版されています。私が人生の充実の為に皆様にお勧めしたいのは、「瞑想としての俳句吟詠」です。瞑想といえば、静かな場所で、座禅を組んで、「無念無想」になることと思っている人が多いようです。そういう瞑想もあろうかと思いますが、日々流れていく日常の中に「意味・意義」を見出す、あるいは「創りだす」瞑想もあります。芸術活動にはそういう要素があります。その第一歩は、丁寧に観ることだと思います。
      
臥禅による止観瞑想
先ず仰向きに寝て、自身の呼吸を観察します。息を吸っているか吐いているかに気付きます。吐いているときは、心の中で「吐いている」と唱え、吸っているときは、「吸っている」と唱えます。次に、自分の息の長さを観じます。呼吸という漢字のごとく、吐いて吸い終わるまで、「吐いている、吐いている、吸っている、吸っている」と唱え続け観察し続けます。最初の内は、唇の隙間から、シャボン玉を大きく膨らませるように、横笛を吹くようにそっと息を漏らしましょう。吸う息は、鼻からです。更に、呼吸に伴うからだの微妙な動きを観ます。お腹の動き、胸の動き、肩の動きなどです。そして更には、自分の意識・思考の変化も見続けます。自然に息が深くなり、姿勢が調い、心が調います。スイッチが切り替わります。スイッチが入れ替わり、集中力の高まったそのままで、自然の営みや自分自身の意識、人々の営みに触れて、言葉にしてみましょう。俳句だけでなく、止観瞑想は、あらゆることにおいて、創造と上達を促してくれます。