冥想の調身による情報システム改善

 冥想・禅において「調身」とは、冥想するにふさわしい基本姿勢になることをいいます。冥想・禅は、長時間同じ姿勢を続けます。 それで、同じ姿勢を続けても、疲れたり痛みを生じたりしない姿勢になることから始まります。筋肉の緊張で姿勢をつくるのではなく、必要な時、必要なところに、必要なだけ筋緊張を起こし、バランスでつくる姿勢です。ほんの少しだけ、左右前後に姿勢を移動(揺身)し、筋肉の緊張感のない位置を探ります。 リラックスした姿勢とも言えます。

 少し詳しい解説をしますと、私たちの日常の姿勢や動作は、固有覚とか平衡感覚を基に作られています。しかも、そういった感覚は無意識的に処理されています。
 ですので調身は、いつもは無意識的に行われている姿勢調整を、意識的に行うことと言えます。

 自閉症スペクトラムの傾向にある人は、感覚機能において、他の人より感度が高かったり、低かったりします。固有覚や平衡感覚についても言えます。自閉症スペクトラムの人だけに限らず、私たちは感覚機能に高低がありますが、無意識的に感度が調整され、感覚情報も交通整理されています。自閉症スペクトラム傾向にある人は、この調整(交通整理)がうまくいかないので、感度が高くとも混乱してしまう傾向にあります。

 特に固有覚や平衡感覚の調整がうまくいかないと、自己イメージ、自己像の形成がうまくいかなかったりします。意図したことではないのに、ひとやものへの触れ方が、乱暴・乱雑に見えたりします。

 意識的で微妙な感覚調整「調身」を行うことが、何らかの感覚機能訓練、機能システムへの刺激となり、感覚機能や調整力を高め、運動機能の上達、巧緻性につながったりします。
 
(感受性を高めるには、与える刺激はなるべく小さく、努力は少ないほうが望ましいです。)

 冥想・禅における「調身」は、同じ姿勢を続けるための調身ですが、私たちは動物であり、動き回るのが本来の姿です。 ですので、同じ姿勢を続けるための「調身」だけでなく、動くための「調身」があります。同じ姿勢を続けるための「調身」とは原理が同じです。無意識的に行われている調整を、一部意識化します。感覚情報の階層化によって、交通整理を行います。

 「フェルデンクライスメソッド」「野口体操」「アレクサンダーテクニーク」「センサリーアウェアネス」「認知運動療法」といった方法があり、潜在的な能力が活性化され、姿勢・動作の改善につながります。