スタイルを変える ダイエットから見えてくる世界革命

7月25日に講座を開く。その時の資料の一部として、ここ最近考えていることを、A4二枚分にまとめてみた。



「痩せたい」「体重が減らしたい」「姿勢を良くしたい」これらを別の表現をするなら「スタイルを変えたい」ということでしょう。

 いままでどおりの生活、行動、運動を続けていては、スタイルは変わりません。
 そこで、私達は、食事を変えてみたり、運動を始めたりします。
  
 本屋さんに行けば実にたくさんの指導書が売られています。しかし、スタイルを変えることに成功するのは少数のようです。思ったほど効果が表れなかったり、内容がハードすぎたりして、続かない人が多いです。
 
 仕事であれ、武道であれ、芸道であれ、人生そのものであれ、何かを学ぶ時、学ぶという言葉の語源「まねぶ」が示すように、先ず目に見える「型・かたち」をまねすることから始まったりします。
 
 真似をするにもコツがあります。また、型の奥にある「理論・奥儀」を理解することが大事です。
 理論や奥儀に基づかない行動は、目的に達することができません。
 ここでは、脳科学に基づいて、スタイルと行動の変容の理論を説明します。

<< フィードバックとフィードフォワード >>
 私達の日々日常の具体的な行動の一つ一つは、どのような仕組みで生み出されているでしょうか? 自由意思に基づいて、必要な筋肉運動を脳が指令し、その動きに対する自分自身の筋肉や環境からの反応を感覚で感じ取り、つまりフィードバックし、行動を修正し、より適切な行動を選んでいく、というようなイメージでしょうか?
 
 最近の脳科学ののべるところによりますと、私達の行動には、フィードバック制御以前に、フィードフォワード制御が働いているといわれています。
 具体的な筋肉運動を始める以前に、脳の中で先ず「運動プログラム」が無意識的に作られ、その次に意思が生じ、「内部モデル」に従って運動のシミュレーションがなされ、そこで計算された筋肉活動プログラムに従って、筋肉は活動するといわれています。
 
 つまり「内部モデル」が無いと、私達はスムーズに、なめらかに動けないのです。
 何か新しいことを学ぶ時、からだが固くなり、スムーズに動けないのは、新しいことへの内部モデルができていないからです。また、筋肉を固くして、関節の自由度を少なくすることによって、操作すべき筋肉の数と内容を減そうとしています。
 
 では、どうやって精密な「内部モデル」を創っていけばいいのでしょうか?

<< 自己イメージ >>
 フェルデンクライスは、「フェルデンクライス身体訓練法」大和書房刊の中でこう述べています。
 
 < われわれは自らの自己イメージ通りに行動する。この自己イメージは、遺伝、教育、自己教育という三つの要因に制約される。>
 私達は空を飛びたいと思っても、いきなり崖から飛び降りることはありません。羽根が無いからです。これは「遺伝子」による制約です。遺伝子による制約は変えようがありません。いくら食べ物を変えても、人間に羽根は生えてきません。ですので、私達もそのような努力は最初からしません。
日本に生まれて育つと、学校へ行く前に大抵の人は、日本語をしゃべれるようになります。これは、「教育」のおかげです。学校へ行き始めると、英語を学びます。しかし、すべての人が英語を話せるようになる訳ではありません。これは、「自己教育」の制約です。
 
 日本人が日本で育つ中で、自然と日本語を身につけていくように、学ぶことつまり、具体的に示された姿かたち「型・かたち」をまねすることから、内部モデルをつくっていきます。 
 
 ただ、同じ体系の中で内部モデルを拡張するのか、体系の違う内部モデルを作るのかによって、内部モデルを作る難しさは違ってきます。例えば、小学生が「自由」とか「孤独」という言葉を獲得して、自分の言葉の体系の中に組み入れることと、新たにフランス語やサンスクリット語を学ぶのは、同じ仕組みではありません。
 フランス語やサンスクリット語を学ぶ時、つまり別の体系の内部モデルを学ぶ時は、すでに学んでいる内部モデルが新しい学習の邪魔をします。
 
<< 分節 >>
 新たに何かの内部モデルを作る時、私達は、外から観察できる形をそのまま真似することから始めたりします。しかし、動作をまねする時、2か所以上が一緒に動いたり、動作そのものが次々変化していきます。そこで、その人なりにからだや動作を小さく区切って覚えます。この働きを、「分節」といいます。同じ動きを見て真似するにしても、人によって分節の仕方が違います。また、余り細かく分節してしまうと、真似するのが大変です。また全体の流れを見失ったりします。
 上級者になればなるほど、分節が細かくなり同時に、大きくもなるといわれています。絵の上達者は、細密画も描けるし、略画も同時に描くことができます。初心者は、自分がおこなった分節を一般的な分節と思い込んだり、全体の流れや繋がりを見失ったりします。

<< ライフスタイル >>
 ラケットでテニスボールをバックハンドで打つとか、野球のカーブの投げ方を覚えるとかいった、個々の動作のことではなく、対人関係の持ち方、仕事の選択といったもう一つレベルが上の一連の行動についても、私達は、「内部モデル」に従って行動しています。ある流派の心理学では、この内部モデルのことを「ライフスタイル」といい、それは、「自己概念」「世界像」「自己理想」を構成要素としていると捉えます。
 時代も刻々と変化しています。この変化していく時代の中で生きていくにあたって、その時代の変化に対応でき、乗り越えることのできるあらたな「内部モデル」(世界観・倫理観)が必要です。
 この場合もやはり、すでに学んでいる内部モデルが新たな内部モデルの学習の邪魔をしたりします。
 
 ただ単に意思表示するだけなら、「NON」という反応だけでも可能です。ある動きに対して抵抗したり破壊したりする行動です。しかし、新たに人生を切り開いていくには、「NON」という反応だけではできません。
(仏教の中観派がいうところの「空」と「NON」は同じではないでしょう。空は新しい創造と選択を行いますが、それに囚われないということでしょう。)
 第一次大戦後、ドイツにおいて旧体制が崩壊しました。しかし、その革命が続かなかったのは、新たな時代を創っていく「内部モデル」が無かったせいのように思えます。批判したり否定するだけでは、新たな時代と人生は生まれないでしょう。スタイルを変え、革命を起こすには、理論と具体的な方法論が必要です。