瞑想と心理学

〇心理学は「行動」についての学

まず最初に述べておきたいことは、心理学は「行動」についての学であるということです。ここでいう行動とは、外から見えるからだの動きのことだけでなく、気分や感情、思考なども含んだ人間全体の行動の事です。

〇私達の行動は、無意識的な行動、習慣的な行動がベースになっています。

 人間全体の行動を振り返って観察してみると、私達の行動は、習慣的、無意識的、潜在意識的な行動の上に成り立っています。
 例えば、車の運転中交差点で曲がるとき、ここで曲がると決めるのは意識的な行動かもしれませんが、アクセルやブレーキの踏み具合などは無意識的に行われています。自動販売機で切符を買うとき、行き先までの料金を確かめるのは意識的かもしれませんが、財布からお金を出すといった行動は無意識的に行われていたりします。
 母国語や地方語を話すこと、書くこと、買い物をする事、自転車に乗ること、楽器を演奏すること、ご飯を食べること、トイレへ行くこと、テレビを観ること、喧嘩をする事、ありとあらゆる行動は、無意識と意識の共同作業です。
 心理学者の中には、私達の行動は、生まれつき備わっている行動(無条件反射)と生育過程で新たに身につけた反射による行動(条件反射)の複雑な組み合わせで成り立っていると考える人々もいます。

〇悩み苦しみ、不安になり、気分が落ち込むこともまた行動です。

 悩みや苦しみは、適切な行動を見い出せなかったり、自分の行動が適切でなかったりすると生まれたりします。悩みや苦しみを解決するには、適切な行動を見い出すこと、創りだすことが必要になってきます。それもまた行動です。

〇無意識的な行動を意識化する方法の一つが「瞑想」です。

 新しい行動を生みだしていくには、それまでの行動を意識化する必要があります。自分の行動のどこが不適切だったのか、殆ど習慣的、無意識的に行われている自分の行動を意識化して、不適切なところをより適切な行動に置き換えることが大切です。 自分と世界から距離を置き、自分の行動を意識化することの一つの方法が「瞑想」です。 瞑想以外にも、問題意識をもって人と話をする事、人の話を聞くこと、日記をつけることなども、無意識の意識化につながったりします。


〇行動の変容、上達には、反復練習が必要です。

 自分の行動の不適切さに気付いたからと言って、問題が即解決するわけではありません。不適切な行動に代わる新しい行動を身につける必要があります。身につけるとは、無意識化するということです。新たな行動は、最初は意識して(自覚的に)行うことが必要です。従来の無意識的な行動のちからは強力で、意識していないと、刺激に対して習慣的、反射的にその不適切な行動で動きがちです。
(あなたは、クサギの虫を美味しいと感じることが出来ますか? 焼くと皮は香ばしいパイ皮のようで、内臓はピーナッツクリームのような味がします。)
 意識的に行動を反復しているうちに、やがて無意識化していきます。無意識化するまで繰り返さないと、ぎこちないものになります。

諸行無常

 ある行動を別の新しい行動にかえて問題が解決したとしても、その新しい行動がいつでもどこでも適切な行動であるとは限りません。状況の変化に合わせて、自分の行動もより適切なものへと変化させる柔軟性も大切でしょう。無意識的な行動を信頼すると同時に、自己点検を続けることも大事だと思います。

〇自力の瞑想・他力の瞑想・自力他力を越えた瞑想

 「無意識的な不適切な行動に替わって新たな行動を」と言いましたが、実のところ無意識的な、習慣的な行動(考え・もののみかた)のちからはとても強力で、わかっちゃいるが止められない、ということも多々あります。そこで絶望したりします。絶望することが、自力から他力、自力や他力をも越えていくきっかけ、汎在神論との出会い、信仰の目覚め、神秘的体験の受け入れになったりします。