信仰は、純粋に個人的な事柄である 椎名麟三

椎名麟三」という小説家の名前を最初に知ったのは、高校の「文学史」の授業かなと思っています。以来、経歴も主要作品も知らないまま、40年以上経ちました。
 
 最近になって、戦後に洗礼を受けたキリスト教作家、ベストセラー作家であることを知り、興味を持ちました。町立の図書館へ行ってみると、アルファベット順に並んだ日本文学の棚にはなくて、著者検索カードから2冊見つけました。でも、この2冊で十分味わえました。

 「信仰は、純粋に個人的な事柄である。」と述べられています。(80頁) そう思います。私は、旧約・新約の聖書に関心はありますが、紋切型の解釈や教会には関心がありません。
 
 一方、すごい誤解もしていました。イエス・キリストというのは、日本の姓名のようなものと軽く思っていたのですが、イエスはよくある人の名前(ヨシュア)であり、キリストは救世主(メシア)という意味で、イエス・キリストという表現は、そう呼ぶことだけで、イエスは救世主である、(人間であり、神である)と信仰告白をしていることになるそうです。
 
 でもこれはある意味、「色即是空」に通じるのですね。

 椎名麟三氏は、ありとあらゆる二元対立論から生まれる苦しみに対して、あれを活かし、同時にこれも活かす立場、そして同時にあれでもなく、これでもない、そのどちらに対しても絶対性を持つことを拒否する第三の立場、場所が必要だと述べられています。
 

聖書の中でいえば、「苦杯を差し出さないでください、いえあなたの御心のままに」というのが、第三の場所でしょうか。