初心俳句会 蟹・キンゼイ報告・黒揚羽

私の職場は街の中にあって、海や磯からは遠く離れています。
それでも毎年、海の蟹が迷い込むことがあります。
決まって小蟹です。
家の前の溝に放しましたが、さてどのような旅を続けるのでしょう。
      
「夏過ぎて海から遠く蟹登る」
      
       
「自分がこの世界を見ているように、他の多くの人々にも同じように世界が見えていて、時々その中に<自分達>とは違った見え方をする<特異な人>がいる。」
      
これまでの自分の他者像のひとつを取り出してみると、そんな風にとらえていたように思います。
       
「普通なんてないんだ。」とか「人は、自分の聞きたいように聴いて、見たいように見ているんだ。」といいつつ、やはり「普通」と「特異」を分けていたように思います。
        
        
350項目からなる質問の直接インタビューをもとに作られたキンゼイレポート(1948年男性版、1953年女性版)で有名なキンゼイ博士は、性の科学者として名をはせる前には、タマバチの分類学者でした。
        
タマバチは、体長5ミリ以下の小さなハチで、植物に「虫こぶ」と呼ばれるコブのようなものを作り、その中で幼虫から蛹へと成長し羽化するのが特徴です。
          
冬の内に植物の冬芽の中に卵を産み付けます。春になると新芽の成長と共に、虫こぶも成長し、その中で幼虫は育ちます。
            
タマバチは、その姿が多様なのです。
「タマバチの仲間には、同じ種類でも幼虫や虫瘤の形態が全く異なるものが存在する」というのです。同じ種類でありながら、姿かたちが微妙に一匹一匹違うそうです。幼虫が成長してみると、親とは違った形態になるというということもあるそうです。
           
産卵対象に応じて幼虫や虫瘤の形態を自在に変えているのではないかといわれています。
そこが研究者として興味の魅かれるところなのでしょう。
         
人間もまた、じっくり観察すれば、一人一人がそれぞれ違った姿形をしています。
       
ましてや、その内面まで考えると、さらに違いが見えてくるでしょう。
        
一人一人の中に「こだわり」があることでしょう
        
「風に揺れ堅くなりゆく黒揚羽」