目的論と心理学と苦の解決と

k1s2012-06-21

目的論と心理学と苦の解決と
       
言葉一般がそうであるように、「目的論」という言葉も、使う人によって、その単語の意味するところに微妙な違いがあります。(恣意性)
       
言語学的に言えば、記号表現・シニフィアン・能記としての「目的論」は同じでも、その記号内容・シニフィエ・所記は、使う人によって違いがあります。
      
 そこで「目的論」という言葉の記号内容を、私なりに整理したいと思います。
 それとて、言葉で行うことですから、すっきりとはいかないとは思います。
      
☆哲学的領域で使われる「目的論」 
 
存在論と対になった目的論
 人間だけでなく、諸生命体、更にはこの世界全体が、どこかある目的に向かって存在し活動していると捉える見方のこと
○機械論と対になった目的論
 この世界は、物理学的、生理学的因果律に支配された精密な機械だと捉える見方に対して、自由意志で以て自己決定していくシステムだという見方のこと
 
☆心理学的領域で使われる「目的論」
 
原因論と対になった目的論
 今目の前にある課題・苦しみの原因は何かと考え、その原因を取り除こうとする原因論に対して、今ある課題・苦しみは、どのような目的因が原因になっているかと考える捉え方。目的論であっても、因果論の一種。

○解決志向的、プラグマティズム的、複雑系的な目的論
 物事の生滅、変化には、因果律があるとは認めつつ、因果は、一因一果とは限らない、又線型的な因果だけでなく、非線形的、複雑系的、創発的、システム論的、相互作用的因果もあると捉え、また、公理系によっても違い、観察が現象の変化に影響を与えることも考慮し、原因を追究するよりも、解決につながる具体的な行動対策、実践を重視する立場
(何を以て解決とするか、解決像を問いだすとややこしくなるけれど、それは関わる当事者が現場で創造すること、現実には解決像が一致しなかったり、創造できなかったりしますけどね。そういうときは、忍。)
 
 ある流派の心理学が目的論を、基本前提としていますが、その流派に属する人でも、どの程度、どの目的論を採用するかは、まちまちです。
 
 ましてや、原因論と対になった目的因的「目的論」を一部あるいは表面的に標榜しつつ、基本的には原因論に従って対処する人も結構います。