クリスマスイブの夜に チャップリンを

産業・組織心理学を学んでいると、その歴史過程の中に必ず20世紀初頭のアメリカでの「科学的管理法」が出てきます。科学的管理法について言及するとき、チャップリンのモダンタイムスがイメージされます。
 
歴史を大雑把に見ると、大航海時代を経て、産業革命となり、世は植民地獲得競争の世界となりました。第一次世界大戦は、「国家・国民」あげての戦争となりました。その延長上に、現在があります。

書棚にあった「チャップリン自伝」を出してきて、再読しました。

 幼少時代、私はチャップリンほどの極貧ではありませんでしたが、板壁の節穴から光が差し込む家に住んでいました。年末になると、借金取りがやってきました。「どうしても払ってくれ」「そういわれても払えない」と双方泣いていました。
 
 チャップリン自伝23ページ
 < 何しろ金持ちと貧乏人との間に極端な差があり、下層階級の女としては召使になるか、ひどい工場で汗水流して働くしか生きる途のなかったヴィクトリア時代のことである。そういった恐るべき不平等に対し、小柄で、きゃしゃで、傷つきやすい母は、必死になって闘っていた。>
 自伝28ページ
< そのうちに、語りつづける母の眼に涙があふれた。(中略) イエスが「汝、今日より我とともにパラダイスにあらん」と答えられたという話などが、つぎつぎとつづいた。(中略) 「お分かりか?」母はいった。「イエスさまはとても人間的な方だったんだよ。わたしたちとまったく同じように、疑いのために苦しまれたのだからね」
 
 母の話に感動のあまり、わたしはその夜のうちにでも死んで、イエスさまのもとへ行ってしまいたいような気持になった。しかし、母はわたしよりも冷静だった。「イエスさまはね、おまえがまず生きて、この世の運命を全うすることをお望みなのだよ」と、説いて聞かせた。その夜、母はオークリイ・ストリートの暗い地階の部屋で、生まれてはじめて知る暖かい灯をわたしの胸にともしてくれた。その灯とは、文学や演劇にもっとも偉大で豊かな主題を与えつづけてきたもの、すなわち愛、憐れみ、そして人間の心だった。>

 来年を予想すると、厳しい年になりそうと思っています。
 
 でも、チャップリンと母のことを思えば、「この世の運命を全う」しようとする、勇気が持てそうです。
 
 映画、ライムライトの中のセリフから

< Yes, life is wonderful, if you're not afraid of it. All it needs is courage,imagination, and a little dough.>