多数決は、民主主義か?

「多数決で決めたことだから、それは民主主義だ」とか「多数決は民主主義だ」とかいう発言を、一般人だけでなく、有名人が発言していることを、テレビなどで、よく耳や目にします。
 
 はたして、多数決は民主主義か?
 
 ある人間の営み、人間集団の営みが、自分に利益をもたらすならば、利益を享受する人は、その営みの持続に、当然賛成するでしょう。
 利益とは、経済的なものとは限りません。精神的なものも含まれます。
 
 同じく、ある人間の営み、人間集団の営みが、自分に被害をもたらすならば、被害を受ける人は、当然その営みの持続に反対するでしょう。
 
 ある人間の営み、人間集団の営みが、多くの人には利益をもたらし、同時に少数の人々には被害をもたらす時、その営みの持続について、多数決をとったなら、当然、賛成の人々が多数を占めることでしょう。
 
 ある人間の営み、人間集団の営みが、多くの人々に利益をもたらしているとしても、それが同時に、ある人々には被害をもたらしていることについて、もし利益を得ている人々が、知らないとしたら、多数決の前に、自分の利益は、被害を受けている人々の犠牲の上に成り立っていることを知らねばなりません。知るというのは、単に言葉の情報で知るだけでなく、できるならばその被害を味わってみることです。
 
 かつて、ある営みが、多くの人々が利益を得ると同時に、少数の人々が被害を受けるような状況で、その被害を受ける人々がその営みに対して反対を唱えた時、多数の人々は、それを「地域エゴ」と言ったりしました。
 しかし、被害を受けることに対して異を唱えるのは、当然の行為であって、むしろ利益を得るから、自分には害をもたらさないから、といってその営みを多数決でもって押し通すのは、「多数者エゴ」「受益者エゴ」だと私は思うのです。
 
 そういったときの多数決は、民主主義ではなく、エゴイズムだと思うのです。