赤い林檎に唇よせて

独房に林檎と寝たる誕生日    秋元不死男
    
空は太初の青さ妻より林檎うく  中村草田男
    
 幼い頃、風邪をひいて寝込んだりすると、母は擂り林檎を作り、林檎の汁をスプーンで掬って飲ませてくれました。
 林檎の汁は、直ぐ変色してしまうのだけど、とても美味しかったです。
 十代の頃、ガールフレンドとたまたま入った喫茶店で、リンゴジュースを頼むと、フレッシュの白いふわふわのジュースが出てきて、とても美味しかったです。
   
 さて、林檎を観たり、触ったり、食べたりしますと、赤い、冷たい、重い、つやつやしている、酸っぱい、甘い、堅いなどの属性を見い出すことができます。
  
 がしかし、どこにも、「美味しい」という属性は見い出せません。
  
 私達が住む地球という林檎を、切っても、剥いても、かじっても、「救い」「幸せ」「悟り」という属性は見い出せないのでしょうね。