公園の木が歌ってくれた歌

100年前、目の前には川が流れていた
その季節になれば、北から南から鳥がやってきた
田圃からは蜻蛉が、畑からは蝶々が飛んできた
根元の草叢で虫たちが集き
秋に落とした葉っぱの中で虫たちは眠った
子どもたちは私の幹と枝で遊び
若者は日陰で憩い歌い
大人たちはもたれて人生の疲れを癒した

オリンピックの年に、川は道路になった
夜空の星はだんだん見えなくなり
鳥たちも来なくなった
煮炊きするわけではないのに
枝は切り詰められ
花弁はコンクリートの上でゴミにされる
薬のおかげで虫はいなくなった
子どもも大人もうつむいて通り過ぎていく
 
根は大地にだけ伸びるのではない
耳を傾け響きあう関係が根となるのだ
人間も私も まるで根無し草のよう

でも私は、微かな風を感じることができる
スモッグの上の星の光を感じている
アスファルトの下に地下水脈が流れている
 
自分自身が見えない人間よ 私に耳を寄せ
深い深い地下水脈のせせらぎに耳を澄ませなさい