居場所

居場所
 
祖父の家に小さな池があり、鯉が十数匹程居た
谷の水を、孟宗竹の樋で引き入れ、
いつも水面をたたく水の音がしていた
 
その池のほとりに小さな椿の木があり、
枝振りが、座るのにちょうどよかった
 
私は日永一日、椿の木の上で遊んだ
 
隠居部屋の裏手に、日当たりのいい斜面があり
その斜面に大きな岩が突き出ていた
表面は滑らかで
そこも私のお気に入りの場所だった
 
日向ぼっこをしたり、猫と遊んだりした
 
大人になってから、その場所へ行ってみると
大人一人がやっと座れるくらいの岩だったが
子供のときは広く感じた
そこは、魔法の絨毯だった
 
大人になって
今、接骨院の窓口にある席に座ってこの文章を書いている
この場所も結構気に入っている
 
家に帰ると、子供部屋の一角に子供が使っていた机があり
そこを片付けて、絵を描く場所にしている
 
お気に入りの場所があるということは幸せだ
そこは、ただ単なる場所ではなく、私の一部なのかもしれない
そして同時に、私は世界の一部になっている

ハイキングや散歩に出かけ
椅子に座る、木に座る、岩に腰掛ける
 
椅子や木や岩は私の一部となり
私は世界の一部になる
 
子供たちは、自分のお気に入りの場所を見出しているだろうか
まだ、見出せていないようにも思う
 
それは、どこにでもあるわけでなく
そして、どこにでもあるのだが