三角の虹

生きるということ 三角の虹
 
死は完全なる静止だろうか
私が死んだとて、世界は動き続けるだろう
私を構成していた諸々の物質もまた、分散していくことだろう
私は虹のようなもの
ある条件が揃って 空に一時現れたもの
虹にたどり着けないように
私は私にたどり着けない
 
ただ現れて、ただ消えていく存在なのかもしれないが
それでは物語は始まらない
 
空にかかる虹と違って 人間という虹は
ある程度は、自ら動き、輝き方を変えられる存在であると仮定しよう
 
空に架かる虹には苦悩が無いだろう
人間という虹には苦悩がある
 
とどのつまり、必ず色褪せて、消えてしまうことを知るがゆえの苦しみ
他の虹と折り合えない苦しみ 理解し得ない苦しみ
 
ただこの苦しみを知るがゆえに
各々の虹は輝きが違ってくる 
輝きそしてやはり消える
 
絶対の孤独
この生きるという摩訶不思議なこと 三角の虹
 
空に架かる虹は お互い触れ合うことは無いが
人間という虹は お互い触れ合うことが出来る
 
肌に宇宙の神秘が隠されているが
さて、どれほどの人間がそのことに気づくのだろう