寅さんの結婚? 2019年正月お楽しみで脚本つくり


若者 「ねえ、寅さんは、結婚しないの?」

寅さん「俺かい? 俺は、愛し合っても、結婚はしないな。」

若者 「え、どうして?」

寅さん「どうしてって、ひととひとが愛し合うのに、届け出とか許可が必要かい?ようく、世の中を見てごらん。こんなに大勢のひとがいるのに、同じ顔をした人はいないだろ。一人の人間でも、若い時と大人になった時とは違う、泣いてる顔と笑っている顔はちがう。だから、ひととひとが愛し合うにも、色んな姿がある。 おんなじじゃない。


若者「なんでもあり、ってことですか。なんでもありってことは、何もないというのと同じですね。」


寅さん「そうよ、愛し合うのに、決まった型などない。型はないけどよ、縄をなうようにね、まず、ひとりひとりそれぞれが、身を捩ることが大切だ。そして、二人でその都度、お互いの思いと身を寄せ合い、すり合わせながら生きていけばいいんじゃないか。」


若者「寅さん、僕、縄をなったことがないんです。」


寅さん「そうかい、縄をなったことがないのか、じゃ、今の話わかんないだろな。ようく見てろよ、横槌で叩いた藁をな、一掴み掌にとって、二つに分けて、両手でまず撚りをかける。向こう側の藁を手前に持ってきて、また撚りをかける。その繰り返しだ。お互いに撚りがかかっているから、絡まっていく。束ねただけでは、一本の縄にはならないんだよ。」


若者「じゃあ、二人が思いをすり合わせ、婚姻届けを出すことに同意すれば、出してもいいんですよね。」


寅さん「そうさね。まあ、税金のこととか、幾分は有利なことがあるかもしれない。ところが、世間に認められ、ましてや国家に認められると、そこからこそが、ふたりには危険なんだよ。」


若者「どういうことですか?」


寅さん「世間に認められ、いつも一緒にいるとね、慣れが生まれたり、努力を怠るようになりがちなんだ。縄をなうことでいうと、甘ければ甘いほど、独り、身を捩ることを忘れてしまう。愛は習慣や強制された義務じゃない。巣に籠ることでもない。だから、俺は愛し合っても、結婚はしないね。」


若者「それじゃあ、子育ては誰がするんですか?」


寅さん「それも色々なんだな。お前さんの方が、よく知っているだろ。核家族なんてのは、ほんの最近の話よ。」

2019年1月1日〜3日 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町市野々3987 NPO熊野みんなの家にて
熊野特別編の脚本つくりをして、楽しみます。宿泊も可能です。参加費無料。